こうくうねんまくしっかん口腔粘膜疾患とは
口腔粘膜疾患とは、口唇・舌・歯肉・頬粘膜・口蓋・口底などに、びらん、潰瘍、腫瘤、水疱などの症状を呈する疾患です。
口腔粘膜は、唾液により湿潤し保護されていますが、歯や食物などによる機械的および温度的刺激を受けやすいため、局所の安静が保ちにくく症状が変化しやすいのが特徴です。また、口腔内には多数の常在菌が存在し、感染による影響も受けやすいといわれています。
口腔粘膜疾患の症状は多岐にわたるうえ、病変が上記のような刺激によって2次的に修飾されるため、診断および原因の特定が困難な場合が少なくありません。
主な疾患
口内炎
口腔内に円形または楕円形の潰瘍を呈するアフタ性口内炎やウイルスの感染によって水疱やびらんを呈するウイルス性口内炎などがあります。
- アフタ性口内炎
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アフタとは、周囲に紅斑を呈した円形または楕円形の浅い潰瘍をいいます。潰瘍の底面は、灰白色の偽膜で覆われています。原因は不明ですが、べーチェット病や潰瘍性大腸炎などの全身疾患に伴う場合もあります。
- 帯状疱疹
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帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスの回帰感染により、口腔内では三叉神経(上顎神経または下顎神経)領域に一致して片側性に口蓋,歯肉および口唇に有痛性の水疱やびらんが多発します。
口腔扁平苔癬
難治性の炎症性角化病変であり、金属アレルギーとの鑑別が重要です。頬粘膜が好発部位ですが、舌、歯肉、口蓋などにも発生します。
- 口腔扁平苔癬
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両側頬粘膜に網状の白斑を認めます。びらんや潰瘍を伴う場合もあります。
- 口腔扁平苔癬
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左側下顎歯肉および頬粘膜に白斑および発赤を認めます。病変が金属冠の周囲に認めることから金属アレルギーとの鑑別が必要になります。
口腔カンジダ症
口腔常在菌であるカンジダという真菌によっておこる口腔感染症です。
- 急性偽膜性口腔カンジダ症
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舌に白苔や偽膜の付着を認めます。頬粘膜や口蓋に認める場合もあります。白苔はガーゼで拭うと簡単に剥離します。
- 萎縮性口腔カンジダ症
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白苔や偽膜は認めず、粘膜に紅斑を呈します。急性偽膜性カンジダ症よりも疼痛や違和感を強く認めます。
自己免疫性水疱症
粘膜上皮の細胞を接着させる分子に対する自己抗体(自分自身を攻撃してしまう抗体)により、口腔内に水疱やびらんが生じる疾患です。口腔内に発症するのは主として天疱瘡と類天疱瘡です。
- 類天疱瘡
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歯肉に水疱を認め、破れてびらんを呈しています。頬粘膜や口蓋に認める場合もあります。
白板症
擦っても剥離しない白い病変で、癌化することがあるため前癌病変と言われています。病理組織検査を行い、結果に応じて切除や厳重な経過観察を行います。
- 白板症
- 白板症
口腔乾燥症
唾液の分泌が減少することによって生じます。口の中が乾燥することにより、舌や頬粘膜などが萎縮し、発赤やびらんを呈します。また、シェーグレン症候群と呼ばれる涙腺や唾液腺を標的とする臓器特異的な自己免疫疾患が原因の場合もあります。
- 口腔乾燥により萎縮した舌
- 萎縮した頬粘膜
眼科や膠原病内科と連携して、診断や治療を行います。この疾患の病態は非常に多様であり、まだ分かっていないことが多いと言われています。精度の高い診断をつけるために、高率に陽性を示す検査を複数組み合わせて診断します。基本的には主な訴えである乾燥に対する制御や緩和を目的とした、対症療法を行います。
診断および治療
病変や症状に応じて必要な検査(血液検査、細菌検査、病理組織検査など)を行い診断します。また、全身疾患との関連も鑑別します。治療は薬物療法などの対症療法を主体に行い、全身的な治療が必要になる場合には皮膚科や内科など医科と連携して行います。
口腔粘膜疾患の当科外来患者数
疾患名 | 2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 |
---|---|---|---|---|---|
白板症・紅板症 | 88 | 98 | 51 | 202 | 147 |
扁平苔癬 | 85 | 80 | 43 | 133 | 122 |
アフタ性口内炎 | 17 | 27 | 11 | 25 | 32 |
単純疱疹・帯状疱疹 | 1 | 6 | 2 | 13 | 9 |
自己免疫性水疱症 | 14 | 5 | 2 | 6 | 10 |
口腔カンジダ症 | 7 | 20 | 17 | 61 | 63 |
口腔乾燥症 | 11 | 19 | 1 | 18 | 17 |
シェーグレン症候群 | 1 | 3 | 0 | 14 | 6 |
その他 | 108 | 165 | 93 | 234 | 90 |
計 | 332 | 423 | 220 | 706 | 496 |
診療案内
口腔外科外来にて毎週金曜日の午後に「粘膜外来」を設置し、診断や治療を行っています。