しにくがん歯肉がん治療
歯肉がんとは、歯ぐきにできるがんのことで舌がんに次いで2番目に多く、口腔がんの約25%を占めます。上顎より下顎に多く発生します。
歯ぐきのすぐ下にはあごの骨(顎骨)があるので、歯肉がんは顎骨を侵しやすく、早期でも手術の際には顎骨の一部を切除する必要があります。この場合、その部分の歯も失われてしまいます。顎骨をある程度以上切除すると、顔の輪郭が変わってしまったり摂食機能が落ちてしまったりします。
下顎歯肉がん治療
口腔がんの約15%を占めます。顎骨への浸潤がわずかな場合は、下顎骨の一部を削ぐ手術(下顎辺縁切除術)を行います。顎骨へ深く浸潤した下顎歯肉がんの手術では、骨を離断する手術(下顎区域切除術)が必要になります。下顎骨の連続性が失われるため、顔の輪郭や摂食機能に影響が出ます。
当分野では、切り離してしまった部分に、主に肩の骨(肩甲骨)を移植することによって、これらの機能障害を最小限にするよう努力しています。この時、切除した口の中の粘膜は、肩甲骨と同時に採取した肩の皮膚を使って補います(遊離肩甲骨複合皮弁移植)。この手術でも血管吻合を行い、残った顎骨と肩甲骨はチタン製のプレートとネジで固定します。この際はあらかじめ、CT検査のデータをもとに患者さんの下顎骨の模型(3Dモデル)を作り、術後のかみ合わせや顔貌が極力変わらないようにしています。
失われた歯については、特殊な入れ歯(顎義歯)を用いて回復しますが、条件が揃えば人工の歯根(インプラント)によって回復することもできます。
- 下顎歯肉がん(術前)
- 下顎歯肉がん(下顎区域切除、遊離肩甲骨複合皮弁移植後)
- 術前3Dモデル
- 術前パノラマX線写真
- 遊離肩甲骨複合皮弁移植後パノラマX線写真
上顎歯肉がん・硬口蓋がん治療
上顎の歯肉に発生するものを上顎歯肉がんといい、口腔がんの10%弱を占めます。口の硬い天井部分に相当する部位(硬口蓋)に発生するものを硬口蓋がんといい、発生頻度は低く、2-3%程度です。どちらも上顎骨・口蓋骨への浸潤を認めることがあります。
画像検査を行い、がんの進行に合わせて、骨の一部を切除する手術(上顎部分切除術)、あるいは全体を切除する手術(上顎亜全摘術、上顎全摘術)を選択します。特に進行した症例では、手術に先立って抗がん剤と放射線治療を併用する方法(術前化学放射線療法)を行うこともあります。
- 上顎歯肉がん
- 硬口蓋がん
手術後の欠損部・失われた歯には、特殊な入れ歯(顎義歯)を作製し装着することで、機能の回復を図ります。
- 上顎部分切除後
- 作製した顎義歯
- 顎義歯装着時